ヨル
少しだけ遅かったんだ
あと1年気持ちがズレたらどうなったんだろう
少し大人になりすぎた僕たちは夜の繁華街を歩きながらあの頃の記憶に耳を傾ける
出会ったばかりの君はとんでもなく輝いて見えてどうにかしてその手を掴みたかったのに今になってそれは簡単に掴ませてはくれないものだったからよかったのだと悟った
よく好きな人を好きな自分に酔うとかいうけれどまさしくそれと同じだった
君のそのブラウスに手を伸ばしてみてはあの頃の僕のなにか大きなものを期待した目がこちらを見つめている
誰でもよかったのかもしれないなんて悲しいことを考えながら
君以外のことを少し思い出した
大人になったつもりでいた僕たちはちっともおとなになんてなりきれないまま夜の街を缶ビールとスミノフ片手に歩いた
酔ってるフリなんてしなくたって君は僕に笑顔を向けてくれたけどどうしていつも同じように嘘をついてしまうんだろう
誰にも見せないつもりだった扉に手がかかった
何になりたいのか君は何者なのか僕は誰なのか何も分からなくなりそうになる
ふと目を開けると少し寂しそうな顔をした君が目の前で笑った
タイムリミットが近づいているのに僕は気がつかないフリをしていたのだろう
こんなに長い間ふたりでいたのに何にも伝えられないまま君は朝焼け光がさす繁華街に溶けていく
安っぽい言葉しか出てこなかった
好きとか愛とかそんなものでは言い表せないなんとも言えない気持ちが完全に登りきった太陽とは裏腹に身体に暗く深く響く音がした