はつかの朝
なんでこんなに言い知れない気持ちになるのかわからないけど君はいつだってそうだ
そうやって手も繋ぐ気もないくせにすっと僕の手の横をすり抜けてみせたり抱かれる気なんてさらさらないくせに君はいつでも少し寂しそうに目を伏せる
もう騙されないと何度自分に言い聞かせて家を出ただろう
君が取ったホテルにふたりで転がり込んで少し黙りこくってみせても君は何も変わらずに静かにタバコを吸うんでしょう
『じゃあまた』
何がまたなんだろう
次に何があるんだろう
『うん、気をつけて』
あと何回こんなことを繰り返せば君は手を繋いでくれるようになるんだろう
ひとりになってもうすっかり日が昇った空に手を伸ばしてついさっきまで君が薬指につけていた指輪を僕の小指に見つけた
バイバイと手を振る君の手をよく見ておかなかったこなとに後悔する
あぁ、君はまたそうやって少しだけ僕のことを引っ張ってみせて次に会う時までに片付けられない気持ちにさせる
何も気がつかなかった自分に嫌気がさして
君のその器用さにもっと嫌気がさして
でもやっぱり愛おしいと思う気持ちがどうにも消えてくれなくてまた家に連れて帰るしかないことに気がついた