丸の内
言葉にした途端無意味なものになって
声に出した途端誰にも拾われない紙切れになった
夏が終わる瞬間大きな歩行者天国で小さく寄り添いながら歩いたあの記憶は私だけのものだったのかもしれない
誰にもバレないようにと人目を気にするフリをしながら本当は名前もない誰かにバレてほしいと思っていた
行き交う人一人ひとりの顔を冷静に識別しながら手先の神経だけは少し伸ばせばあなたに触れられる位置を探していた
風が秋を届けたのをあなたの髪が揺れたのを見て少し寂しくなる
もうほんの近くにいると思っていたあなたが瞬きした次の瞬間には遠くに行ってしまったような気がして
決してあなたから伸ばされない手を力尽くで引き寄せた
余計気持ちも心も遠くに行ってしまった気がした
空を見て綺麗だと小さくこぼしたあなたの姿がどうしても瞼に残る
明日からまた知らぬ顔でお疲れ様ですだなんて挨拶しないといけないのかと思うとあんなに待ち遠しかったこの季節も、"秋なんて"と心が騒ぐ気がした