金木犀
電車の中だろうと例えばエレベーターに乗っている時だろうと徐にキスをねだる君が好きだった
『人目を考えなさい』
なんて言いながら本当は僕だってたまらなく可愛い君にキスをしたかった
自分の欲求にとても素直な君に少し嫉妬しちゃうくらいには僕は自分の真面目さがコンプレックスだったのかもしれない
信号待ちしている僕の服を少し引っ張ってねだってみせる君がたまらなく恋しくなった
君の世界には僕だけしか見えてなかったんだと今になって優越感に浸ってみてはそんなのも昔の話なのかと落胆する
金木犀の香りが帰り道に巻き散らかされているこの街が僕はどうも嫌いにならない
君がにこにこしながら金木犀の香りがあなたを思い出させて忘れさせてくれないのと言うその言葉を思い出した