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いつまで待ってくれる?
初めて泊まるホテルの真っ暗な部屋、
ダブルベットにふたり
君の真面目な声が聞こえた
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名前もないBARに連れ込まれて
光があるのかないのかわからないカウンターでタバコの煙の影だけが見えた
丸の内
言葉にした途端無意味なものになって
声に出した途端誰にも拾われない紙切れになった
夏が終わる瞬間大きな歩行者天国で小さく寄り添いながら歩いたあの記憶は私だけのものだったのかもしれない
誰にもバレないようにと人目を気にするフリをしながら本当は名前もない誰かにバレてほしいと思っていた
行き交う人一人ひとりの顔を冷静に識別しながら手先の神経だけは少し伸ばせばあなたに触れられる位置を探していた
風が秋を届けたのをあなたの髪が揺れたのを見て少し寂しくなる
もうほんの近くにいると思っていたあなたが瞬きした次の瞬間には遠くに行ってしまったような気がして
決してあなたから伸ばされない手を力尽くで引き寄せた
余計気持ちも心も遠くに行ってしまった気がした
空を見て綺麗だと小さくこぼしたあなたの姿がどうしても瞼に残る
明日からまた知らぬ顔でお疲れ様ですだなんて挨拶しないといけないのかと思うとあんなに待ち遠しかったこの季節も、"秋なんて"と心が騒ぐ気がした
サンネンメ
遠くから見ていた君への気持ちをずっと近くで見てみたかった
君の隣で見てみたかった
新幹線で1時間の距離をダメ元で引き寄せた
近ければ近いほど何も見えなくなるのかと思って微かに怯えてたあの頃の僕に教えてあげたい
遠くにいながら手を握り合っていたあの頃よりも
ずっと確かに君の事を大切にできている事を
情は近くなればその分薄れるものだと心の中で恐れていたけれど
まだ全然大丈夫だよ
あの時会えなくて苦しくて愛していた気持ちをきちんと忘れないから
きらきら
キラキラのマニキュアで気分を上げてみた
誰にも言えない秘密をベットに置いた
雨の日に傘を忘れてホームで濡れる
濡れた地面を歩く
歩いたそばからスカートに水が跳ね返る
小指のキラキラが取れかけている
誰に見られるわけでもないのに
なんだかそれが無性に恥ずかしくて
1人の部屋で紅をつける
誰かのためになんて生きられないと思った
自分のために頭を下げるのがばかばかしい
夢も希望も言葉にならない
手を繋ぐ親子が愛おしく妬ましい
夜は寝れない
夏は暑い
雨は今日も上がらない
梅雨
心が冷めた気がした
氷が溶ける音がやけに大きく聞こえる
目線の先にはよく動く形のいい唇
まだひとくち残っているケーキを食べるタイミングを完全に失った
隣の女子高生の会話に意識がいく
コーヒーが冷める
気持ちも心も冷めた
口角が上がらない
うまく話せない
静かに店の外にでた
外は雨だ
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えちえちですね
あなたはそう言って静かに私の心に入ってきた
なんかもう、どうでもいいな…
なんて思ったりしたあの春の入り口に貴方はなにを置いてきたの
少しづつ心が君に奪われていく
じわじわ何かを感じ取りながらなにも動かない私に君はいつもそっと手を乗せる
もういっそのこと貴方にできればいいのに
誰かどこかに私を見つけてほしくて
見つけて欲しくない時の心をどこかに置いてきた