六本木の夜
ずっと2人で会ってみたいと思っていた
君と夜の街を徘徊した
眠らない街を人一人分の距離をキープして
2人で並んで歩いた
何か壁を一枚挟んでしか話してこなかった
君とちゃんと話したいとずっと思っていた
ようやく念願が叶って
できるだけ冷静で慣れている風の仮面を被りながら
僕は心底はしゃいでた
君と2人なんだから
特別な日になることくらい最初から分かっていた
会った瞬間もう特別だった
鉄板を挟みながら
高級そうに見えるお肉を食べながら
その店にあるはずもない安いつまみが好きだなんて言いながら
次はあそこに行きたい
その言葉が聞きたかっただけだ
何となく駆け引きをしてみても
君はそれはそれはキレイに違う方向を向くから
僕はもう素直にはしゃいでみせた
こんなに心地よい夜はいつぶりだろう
肌寒い夜風が酔った頬を撫でる
お酒が回って顔を赤くした君を横目で見ながら
僕はタバコが吸いたくなった
始めて君の前で少し素の僕が出せた気がした
その度に垣間見える素の君がとてもかわいく見えて仕方なかった
手なんて繋いじゃおうかと
そんなことを悩みながら飲み歩いてた
いつの間にか最初にあった人一人分の距離が夜の六本木に消えていった
すぐ隣にぴたっとくっついてきたり
三歩先を歩いたり
君はネコのようだった
とんでもなく素敵だと思う
何かつかめない君と話してるだけで
こんなにも前を向こうと思えるのだから
2人で飲みすぎたなんて言いながら
狭いホテルのベッドに倒れこんだ
もう3時もまわっている
なにも言葉が出てこない
なんて言えば僕のこの気持ちが伝わるかわからなかった
伝わるはずもない気持ちに
言葉をむりやり当てはまるのが馬鹿らしくなった