ひとり暮らしの夜
まだひとり暮らしを始めたばかりの頃は毎日帰ってきたらただいまと言っていた
無意識にでていた言葉だった
それがいつからだろう
鍵を開けて無言で家に入っていくのが当たり前になったのは
それが当たり前になったことにすら気がつかなかった
忙しい毎日のなかで家に『帰る』という意識もだんだん薄れていく
帰る場所なんかじゃなく
いつの間にかただ寝るための場所に変わっていった
家に入って誰とも声を交えずにまた朝がくる
そんな毎日の繰り返しにいつの間にか慣れていた
ふと足を止めて振り返った時には
こんなにも長い道を気にも留めずに進んできてしまったのかと自分に怒りさえ覚えた
何かを変えようたら思ってみても
なにから変えたらいいのかもわからずにまたいつもの『日常』に戻ってしまいそうになる
なにか、
なにかを掴みたいのに掴めない自分の意志の弱さと無意識に行動することの多さに苦しくなる
夜寝る前に
今日1日を反省するよりも
きっと口に出して「おやすみ」と言うことできっと心が少し軽くなる
明日からはきちんと家に「いってきます」「ただいま」を残そう。